節税×資金繰りハック集

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グループ法人税制を使った資金移動テクニック

経営者の皆さん、こんにちは。
税理士の佐藤です。

「子会社は黒字で利益が出ているのに、なぜかグループ全体で見ると資金繰りが苦しい…」
「成長投資をしたいのに、資金が特定の子会社に偏ってしまって動かせない」

現場で15年、数多くの中小企業の経営者様と向き合う中で、このような悩みを本当によく耳にします。
個々の会社は頑張っていても、グループ全体の資金がうまく循環しなければ、成長の足かせになってしまうのです。

しかし、ご安心ください。
その悩み、「グループ法人税制」を正しく活用することで、劇的に改善できる可能性があります。

この記事では、単なる制度解説に留まりません。
私がこれまで150社以上の顧問先で培ってきた経験を基に、グループ法人税制を活用して、節税とグループ内の資金移動を同時に実現する“合法的ハック”を、具体的な事例とともにお伝えします。
この記事を読み終える頃には、あなたの会社の資金繰りを改善するための、新たな一手が見つかっているはずです。

グループ法人税制の基本と資金移動の可能性

グループ法人税制の概要と導入背景

まず、「グループ法人税制」とは何か、簡単におさらいしましょう。

これは、100%の資本関係にある国内の企業グループを、税務上「一つの法人のようなもの」として扱う制度のことです。
この制度は、連結納税制度のように任意で選ぶものではなく、100%の親子関係や兄弟会社関係があれば強制的に適用されるのが大きな特徴です。

なぜこのような制度があるのか?
それは、実質的に一体である企業グループ内での経営資源の移動を、税金が邪魔しないようにするためです。
この制度のおかげで、グループ内での資産の売買や資金の移動が、よりスムーズに行えるようになりました。

資金移動と税制活用の接点

では、この制度がどう資金移動に繋がるのでしょうか。
ポイントは、グループ内の特定の取引では「課税されない」という点です。

例えば、通常であれば会社から会社へお金を渡せば「寄附金」や「配当」として課税されます。
しかし、グループ法人税制のルールを使えば、この課税をなくし、実質的に無税で資金を動かすことが可能になるのです。
キャッシュが豊富な子会社から、投資をしたい親会社や、資金繰りが厳しい別の子会社へ、税負担なく資金をシフトできる。
これが、この制度が持つ最大の可能性です。

活用前に押さえておくべき4つの基本条件(会社要件・持株比率・適用除外など)

ただし、この強力な制度を活用するには、いくつかの基本条件をクリアする必要があります。
ここを見落とすと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があるので注意してください。

  1. 完全支配関係であること
    親会社が子会社の株式を100%保有している、または、一個人が複数の会社の株式をそれぞれ100%保有している(兄弟会社)など、直接または間接的に100%の資本関係があることが大前提です。
  2. 内国法人であること
    原則として、この制度の対象となるのは日本国内に本店がある法人間での取引です。
  3. 強制適用であることの認識
    「うちは中小企業だから関係ない」ということはありません。企業の規模に関わらず、完全支配関係があれば自動的に適用されます。 知らなかったでは済まされないので、自社グループが該当するか必ず確認しましょう。
  4. 適用除外取引の理解
    全ての取引が無税になるわけではありません。例えば、譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満の資産の譲渡などは、この制度の対象外となる場合があります。

これらの基本をしっかり押さえた上で、次の具体的なテクニックに進んでいきましょう。

具体的テクニック1:受取配当等の益金不算入を活用した内部資金の有効移動

制度の仕組みと税効果(法令番号:法法23条の2)

ここからは、最も実用的で多くの企業が活用しているテクニックをご紹介します。
それが「受取配当等の益金不算入」制度の活用です。

これは、完全支配関係にある子会社から受け取った配当金について、受け取った側の利益(益金)に含めなくてよいというルールです(法人税法第23条第1項、第23条の2)。
通常、配当を受け取ると法人税の課税対象となりますが、この制度を使えば、その法人税が一切かかりません。

  • 子会社(出す側):利益剰余金を原資に配当を支払う。
  • 親会社(受ける側):受け取った配当金は全額が益金不算入となり、法人税はゼロ。

結果として、子会社に蓄積された利益を、無税で親会社に還流させ、グループ全体の資金として有効活用できるのです。

グループ内での配当戦略──「出す側」と「受ける側」の税務設計

このテクニックを最大限に活かすには、戦略的な設計が重要です。

例えば、複数の子会社を持つホールディングス(持株会社)体制を考えてみましょう。
利益が出ているA子会社から親会社へ配当し、その資金を、新規事業に投資したいB子会社へ貸し付ける、といった流れが作れます。
これにより、銀行からの借入に頼らず、グループ内の資金だけで成長戦略を描くことが可能になります。

これは多くの経営者が見落としがちなポイントですが、配当はいつでも出せるわけではありません。
株主総会の決議が必要であり、分配可能額の範囲内でしか行えない点には注意が必要です。

実際の活用事例①:持株会社を活用した配当還流で資金集中

実際に私の顧問先で成功した事例をご紹介します。

【事例:年商20億円の飲食チェーン(持株会社体制)】

  • 悩み: 各店舗を運営する子会社ごとに利益が分散。本社(持株会社)には新規出店のためのまとまった資金がなかった。
  • 施策: 利益が出ていた複数の子会社から、株主総会で配当決議を実施。合計8,000万円の利益剰余金を親会社へ配当。
  • 結果: 親会社は無税で8,000万円の資金を集中させることに成功。その資金を元手に、新たなブランドの立ち上げと2店舗の新規出店を実現しました。銀行からの追加融資なしで、スピーディーな事業拡大が可能となったのです。

注意点:持株比率の条件・中間持株会社の影響

この配当テクニックを使う上で、いくつか注意点があります。

  • 完全支配関係の継続: 配当の計算期間の最初から最後まで、継続して100%の支配関係があることが必要です。 期の途中で100%子会社になった場合は、対象外となる可能性があるので注意してください。
  • 源泉徴収のルール変更: 以前は配当支払時に源泉徴収が必要でしたが、税制改正により、令和5年10月1日以降に支払われる完全子法人からの配当は、原則として源泉徴収が不要となり、手続きが簡素化されています。

具体的テクニック2:寄附金の損金不算入ルールを逆手に取ったコントロール

グループ内寄附と税務処理の注意点(法法37条8項)

次にご紹介するのは、少し応用的な資金移動テクニックです。
それは「グループ内寄附」のルールを逆手に取る方法です。

通常、法人が寄附をすると、経費として認められる金額(損金算入額)には上限があります。
しかし、100%の完全支配関係にあるグループ法人への寄附は、支出した側で全額が損金不算入(経費にならない)、受け取った側で全額が益金不算入(利益にならない)と定められています(法人税法第37条)。

「経費にならないなら損じゃないか」と思いますよね。
しかし、ここがポイントです。
両社ともに税務上の損益がゼロ、つまり課税関係が一切発生しないのです。
これにより、配当のように利益剰余金がなくても、会社間でのダイレクトな資金移動が可能になります。

「使える」ケースと「やってはいけない」ケース

このテクニックは強力ですが、使い方を間違えると危険です。
「使える」ケースと「やってはいけない」ケースをしっかり理解しておきましょう。

使えるケース(推奨)やってはいけないケース(非推奨)
目的グループ全体の戦略に基づく、合理的・計画的な資金移動明確な目的のない、場当たり的な赤字補填
具体例・本社機能を持つ親会社への管理部門コストの集約
・新規事業を担う子会社への初期投資資金の提供
・単に赤字の子会社を救済するための資金注入
・グループ外の第三者への利益供与と見なされるような取引
ポイントなぜその資金移動が必要なのか、合理的な理由を説明できること税務署から「不当な利益操作」と見なされるリスクが高い

実際の活用事例②:余剰資金を本社機能会社に移動させる仕組み

これも、私の顧問先での事例です。

【事例:年商15億円の専門商社グループ】

  • 悩み: 営業活動を行う子会社に資金が滞留。一方、グループ全体の経理や総務を担う親会社は、常に資金が不足気味だった。
  • 施策: 各子会社が受けるべき経理・総務サービスの対価として、親会社への「経営指導料」を支払う形では限界があった。そこで、子会社の余剰資金の一部を、グループ法人税制の寄附のルールを使い、親会社へ計画的に移動させた。
  • 結果: 親会社の資金繰りが安定し、グループ全体の管理機能が強化された。子会社は営業活動に専念でき、グループ全体の生産性が向上した。

税務調査での指摘ポイントと対策

現場で15年見てきた経験から申し上げると、税務署はグループ間の不自然なお金の動きに非常に敏感です。
この寄附のテクニックを使う際は、以下の点を必ず守ってください。

  • 契約書・議事録の整備: なぜ資金移動が必要だったのか、その目的と金額の妥当性を示すために、取締役会の議事録などを必ず書面で残しておくこと。
  • 寄附修正の会計処理: 寄附を行った場合、親会社が持つ子会社株式の税務上の価値を調整する「寄附修正」という会計処理が必要です。 これを怠ると、将来、子会社株式を売却する際に思わぬ課税が生じる可能性があります。

安易な資金移動は禁物です。
必ず専門家と相談の上、慎重に進めてください。

具体的テクニック3:グループ通算制度(旧連結納税制度)の選択と資金最適化

通算制度とグループ法人税制の違いとは?

最後に、グループ全体の資金効率を最大化するための、より高度なテクニック「グループ通算制度」をご紹介します。

これまで説明してきたグループ法人税制が「個々の取引」に関するルールだったのに対し、グループ通算制度は「グループ全体の所得計算」に関する、より包括的な制度です。
これは旧・連結納税制度が新しくなったもので、任意で選択することができます。

最大の特徴は「損益通算」ができることです。
つまり、グループ内に赤字の会社と黒字の会社があれば、その利益と損失を合算(相殺)して、グループ全体で法人税を計算できるのです。

制度名適用主な効果
グループ法人税制強制適用グループ内の特定取引(配当・寄附等)で課税されない
グループ通算制度任意適用グループ全体の利益と損失を合算して納税額を計算できる

欠損金の引継ぎと資金移動戦略の組み立て方

グループ通算制度のパワーは、赤字の子会社(繰越欠損金を持つ会社)がある場合に特に発揮されます。

例えば、親会社が1億円の利益、子会社が3,000万円の赤字だったとします。
通常なら、親会社は1億円の利益に対して法人税を支払います。
しかし、グループ通算制度を適用すれば、利益1億円と赤字3,000万円を相殺し、差し引き7,000万円の利益に対してのみ法人税を支払えばよくなります。

これにより、グループ全体での納税額が大幅に圧縮され、手元に残るキャッシュが増えます。
そのキャッシュを再投資に回すことで、グループ全体の成長を加速させることができるのです。

実際の活用事例③:赤字子会社の資金流入を黒字親会社で吸収

【事例:M&Aで事業拡大した製造業グループ】

  • 悩み: M&Aで買収した子会社が、開発投資先行で数年間は赤字の見込み。親会社は黒字で多額の納税が発生していた。
  • 施策: グループ通算制度を適用。親会社の黒字と、買収した子会社の赤字を損益通算した。
  • 結果: グループ全体の法人税負担が年間約1,500万円軽減された。その分、子会社の開発投資を前倒しで進めることができ、計画より1年早く黒字化を達成。まさに「税金」を「未来への投資」に転換できた事例です。

移行時の注意点と制度適用の損益分岐点

グループ通算制度は強力ですが、導入には慎重な判断が必要です。

  • 欠損金の持ち込み制限: 通算制度を始める前に各社が持っていた繰越欠損金は、原則としてその会社自身の利益としか相殺できません(特定欠損金)。 グループ全体ですぐに使えるわけではない点に注意が必要です。
  • 事務負担の増加: 各社が個別に申告するとはいえ、グループ全体での調整計算が必要になるため、経理部門の事務負担は増加します。
  • 中小企業特例の不適用: グループ内に資本金1億円超の法人が1社でもあると、グループ内の全社が中小企業向けの税制優遇(軽減税率など)を受けられなくなる場合があります。

これらのメリット・デメリットを総合的に勘案し、シミュレーションを行った上で、導入を検討することが重要です。

成功事例から学ぶ:中小企業グループでの資金移動パターン3選

ここからは、業種別の成功事例を通じて、より具体的な資金移動のイメージを掴んでいきましょう。
皆さんの会社ではどのパターンが応用できそうか、考えながら読んでみてください。

ケース①:年商7億円 製造業グループの資金集中術

親会社(工場・開発)と子会社(販売)の分業体制。
子会社に利益とキャッシュが溜まる一方、親会社は常に設備投資の資金ニーズがありました。
そこで、子会社から親会社へ定期的に配当を実施(テクニック1)
これにより、親会社は安定的に設備投資資金を確保し、生産性を向上させ続けることに成功しました。

ケース②:急成長中のIT企業グループにおける節税戦略

複数のサービスをそれぞれの子会社で運営。
ある子会社は急成長して大幅な黒字、別の子会社は新規開発中で赤字という状況でした。
そこで、グループ通算制度を導入(テクニック3)
黒字と赤字を損益通算することで、グループ全体の納税額を年間2,000万円以上削減。
削減できたキャッシュを、さらなる新規サービスの開発に再投資し、成長の好循環を生み出しています。

ケース③:事業承継に伴う持株会社設立と資金移動成功例

創業者が複数の事業会社を所有していましたが、後継者への事業承継が課題でした。
そこで、株式移転により持株会社を設立し、各事業会社をその傘下に置きました。
そして、各事業会社から持株会社へ配当(テクニック1)で資金を集約。
後継者は持株会社の経営に集中でき、各事業への戦略的な資金配分もスムーズになりました。
これは、事業承継とグループ資金効率化を同時に実現した好例です。

よくある誤解と失敗例から学ぶ「やってはいけない資金移動」

税務署の視点で見た“危ない”資金移動パターン

税務署の立場で考えてみると、彼らが最も嫌うのは「実態のない、不合理な取引」です。
グループ法人税制は便利な制度ですが、それを隠れ蓑にした安易な利益操作は、必ず見抜かれます。

特に危険なのは、以下のようなパターンです。

「業績の悪い子会社を救うためだけに、理由なく親会社から資金を移動させる」
「役員への高額な貸付や報酬の代わりに、グループ間取引を装って資金を還流させる」

このような取引は、税務調査で「寄附金」と認定されたり、最悪の場合「役員賞与」と見なされ、多額の追徴課税を受けるリスクがあります。

グループ外との混同が招く否認リスク

これは意外と知られていない裏ワザですが…という甘い言葉には注意が必要です。
グループ法人税制は、あくまで100%完全支配関係にあるグループ内での話です。

例えば、社長の親族が経営しているが資本関係は100%ではない会社や、取引先との合弁会社などは対象外です。
これらの会社と同じ感覚で資金移動を行うと、通常の寄附金課税の対象となり、想定外の税負担が発生します。

書面整備・社内手続き不備による否認例

「どうせグループ内のことだから」と、契約書や議事録の作成を怠るのは非常に危険です。
税務調査では、その取引の「正当性」と「合理性」が客観的な証拠に基づいて問われます。

口頭での合意だけでは、第三者である税務署員を納得させることはできません。
資金移動の目的、金額の算定根拠、承認プロセスなどを、必ず書面で残しておく習慣をつけましょう。

実際に税務調査で指摘された事例

ある企業グループで、グループ法人税制の適用を免れるために、意図的に従業員に数株だけ株式を持たせ、100%支配関係を崩した上で、含み損のある不動産をグループ内で売却し、損失を計上しました。
しかし、税務調査でこの一連の行為が「税負担を不当に減少させるための、不自然な行為」と判断され、売却損の計上を否認されるという厳しい結果になりました。

制度の穴を突くような節税策は、必ずしっぺ返しを食らうと心に留めておいてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
グループ法人税制は、単なる税金のルールではなく、グループ全体の成長を加速させるための経営ツールです。

その本質は、グループを一つの生命体と捉え、血液である「資金」を、最も必要とされる場所に、最も効率的に送り届けることにあります。

  • 配当で、利益を成長エンジンに集中させる。
  • 寄附で、戦略的な資金再配置を行う。
  • 損益通算で、グループ全体の税負担を最適化する。

これらのテクニックを、自社の状況に合わせて使い分けることが重要です。

私が15年間、経営者の皆様にお伝えし続けていることがあります。
それは、「節税は経営者の権利だが、脱税は犯罪である」ということです。

今回ご紹介したテクニックは、すべて法律で認められた合法的ハックです。
しかし、その一線を越え、実態を伴わない形式だけの取引を行えば、それは「行き過ぎた節税」、すなわち否認の対象となります。
常に「この取引は、税務署員に胸を張って説明できるか?」と自問自答する姿勢が、経営者を守る最大の盾となります。

まずは今日から始められる3つのチェックリスト

この記事を読んで、「うちも何かできるかもしれない」と感じた方は、まず以下の3点からチェックしてみてください。

  1. [ ] 自社のグループ構成を確認する
    100%の完全支配関係にある法人はどれか、正確に把握していますか?まずは組織図を整理してみましょう。
  2. [ ] 各社の決算書(利益とキャッシュ)を確認する
    グループ内で、どこに利益とキャッシュが偏っているか、数字で可視化してみましょう。資金移動のニーズが見えてくるはずです。
  3. [ ] 資金移動の目的を明確にする
    もし資金を動かすなら、その目的は何ですか?(新規投資、借入金返済、運転資金など)目的が明確でなければ、最適な手法は選べません。

グループ法人税制は複雑ですが、正しく理解し、活用すれば、あなたの会社の経営を力強く後押ししてくれます。
制度は、知っているだけでは宝の持ち腐れです。
使ってこそ、その真価が発揮されます。

もし少しでも不明な点や、自社での具体的な活用方法について相談したいことがあれば、決して一人で悩まないでください。
私たちのような専門家は、そのためにいます。

この記事が、皆さんの事業発展の一助となることを心から応援しています。
なお、個別具体的な税務判断については、必ず顧問税理士にご相談ください。